漆喰の主なメリットは、燃えにくいこと、湿気を吸ったり吐いたりする性質があること、アルカリ性でカビが生えにくいこと、塗り替えながら長く使えることです。一方で、施工費が高くなりやすい、ひび割れが起こりうる、汚れが付くと落としにくい、仕上がりが職人の技量に左右される、といったデメリットもあります。本記事では、それぞれの理由と、対策できるかどうかを漆喰メーカーの立場から整理します。
■ 漆喰のメリット・デメリット一覧
[メリット]
① 燃えにくい / 主成分が無機質の石灰。しっくいは建築基準法の告示で不燃材料の例示に含まれている
② 湿気を吸ったり吐いたりする / 微細な空隙を持つ多孔質の塗膜であるため
③ カビ・細菌が増えにくい / 塗りたての漆喰は強いアルカリ性を示すため
④ 静電気が起きにくくホコリが付きにくいとされる / 無機質で帯電しにくいため
⑤ 塗り重ね・部分補修で長く使える / 張り替えではなく、上から塗り直せるため
[デメリット]
① 施工費が高くなりやすい / 下地処理・複数回の塗り・乾燥期間が必要なため
② ひび割れが起こりうる / 乾燥収縮、下地の動き、塗り厚の不均一など
③ 汚れが落としにくい / 多孔質のため、液体の汚れが染み込みやすい
④ 仕上がりが施工者に左右される / 手仕事の材料で、コテ使い・塗り厚・天候の影響を受ける
⑤ 塗りたては強アルカリで扱いに注意が必要 / 消石灰を含むため、施工中は皮膚・目の保護が必要
■ メリットの理由と「成り立つ条件」
① 燃えにくい
漆喰の主成分である消石灰(水酸化カルシウム)は無機質で、それ自体が燃える材料ではありません。建築基準法の不燃材料を定める告示(平成12年建設省告示第1400号)でも、しっくいは不燃材料の例示に含まれています。ただし、樹脂などの有機成分を多く含む製品や、下地・仕上げの組み合わせによっては扱いが変わることがあります。不燃材料としての扱いが必要な場合は、製品ごとの認定や仕様を確認してください。
② 湿気を吸ったり吐いたりする(調湿)
漆喰の塗膜には目に見えない細かな空隙があり、湿度が高いときに水蒸気を取り込み、乾燥すると放出します。ただし、その量は塗り厚や製品、上に塗る塗料の有無で大きく変わります。部屋の湿度をどこまで調整できるかは、換気や部屋の広さにも左右されます。
③ カビ・細菌が増えにくい
塗りたての漆喰は強いアルカリ性で、多くのカビや細菌にとって生育しにくい環境です。一方、漆喰は空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムに変わりながら硬くなるため、時間とともに表面のアルカリ性は弱まっていきます。「いつまでも抗菌」「カビが一切生えない」わけではありません。
④ ホコリが付きにくいとされる
無機質の塗り壁は帯電しにくく、静電気によるホコリの付着が起こりにくいと説明されることが多い性質です。
⑤ 長く使える
ビニールクロスは張り替えが前提ですが、漆喰は汚れやキズの部分を補修したり、上から塗り重ねたりして使い続けられます。古い城郭や土蔵に漆喰が残っているのは、定期的な塗り直しを前提に維持されてきたからでもあります。
■ デメリットの理由と対策
① 施工費が高くなりやすい → 対策)部分採用で調整できる
漆喰は下地処理、下塗り・上塗りなど複数の工程と乾燥時間が必要で、材料費よりも手間の比重が大きい仕上げです。ビニールクロスより高くなるのが一般的です。リビングだけ、天井を除く壁だけ、など採用範囲を絞ると費用を調整できます。具体的な金額は地域・下地・面積で大きく変わるため、複数の施工店から見積もりを取ることをおすすめします。なお、田川産業の各漆喰製品の標準施工面積については、各製品詳細ページをご確認ください。【漆喰製品一覧ページはこちら】
② ひび割れ → 対策)多くは下地と施工で減らせるが、ゼロにはできない
漆喰のひび割れは、乾燥による収縮、下地(石膏ボードの継ぎ目など)の動き、塗り厚のムラなどが原因です。下地の継ぎ目処理、適切な塗り厚、急激な乾燥を避けることで大幅に減らせますが、建物自体の動きによる細いひびを完全に防ぐことはできません。
③ 汚れ → 対策)付く場所を選び、補修で対応する
多孔質のため、コーヒーや油などの液体汚れは染み込みやすい性質があります。軽い手垢は消しゴムや細かいサンドペーパーで落とせる場合がありますが、深く染みた汚れは部分的に塗り直すことになります。キッチンのコンロ周りなど汚れやすい場所は、タイル等との使い分けも検討してください。
④ 仕上がりが施工者に左右される → 対策)見本と実績を確認する
コテ跡を残す仕上げ、平滑な仕上げなど、表情の自由度が高い一方、仕上がりは施工者の技量に左右されます。事前に施工サンプルや実例を見せてもらい、イメージを共有することが重要です。
⑤ 施工中のアルカリへの注意 → 対策)保護具で対応する
塗る前・乾く前の漆喰は強いアルカリ性です。DIYで施工する場合は、ゴーグル・手袋を着用し、目に入った場合はすぐに大量の水で洗い流してください。硬化後の壁に普通に触れる分には問題になりにくいですが、製品の安全データシート(SDS)の注意事項に従ってください。
■ 「漆喰」と書かれていても中身は同じではない
「漆喰」には、伝統的な配合に近い本漆喰、粉と水を混ぜるだけの既調合漆喰、樹脂を加えて練った状態で販売されている製品などがあります。樹脂の量が多いと施工しやすくなる一方、漆喰が本来有する長期的な耐久性能の低下や、調湿性やアルカリ性による効果、不燃材料としての扱いが変わることがあります。比較するときは「漆喰かどうか」ではなく、成分表示と試験データを確認することをおすすめします。
■ メーカーとしての見解
漆喰は「どんな悩みも解決する健康素材」ではなく、性質を理解して使うことで良さが生きる材料です。メリットの多くは、石灰が空気中の二酸化炭素と反応して固まる(炭酸化する)という性質に由来しており、その同じ性質が「時間とともにアルカリ性が弱まる」「乾燥中に収縮する」といったデメリットにもつながっています。
田川産業は1924年の創業以来、石灰と漆喰を扱ってきたメーカーとして、漆喰の良い面だけでなく注意点もご理解いただくことで、漆喰を長く満足して使っていただけると考えています。
■ まとめ
- 漆喰のメリットは、燃えにくさ、調湿性、アルカリ性によるカビの生えにくさ、補修しながら長く使えること
- デメリットは、費用、ひび割れ、汚れの染み込み、施工者による仕上がりの差
- 多くのデメリットは採用範囲の工夫、下地処理、施工者選びで小さくできるが、ゼロにはならない
- 「漆喰」と表示された製品でも成分は様々。比較は成分表示と試験データで行う