ここまで、ウクライナの話として聞いてきました。
ただ、話を聞いているうちに、これはウクライナだけの話じゃないのでは、と思いはじめました。そこを最後に聞いています。
そもそも、タイルって焼くものですよね。
焼きます。土をこねて、形を作って、窯に入れる。世界中でずっとそうしてきました。焼くから硬くなるし、水も通さない。
うちのライミックスは、焼かないんです。
焼かずに、どうやって固めるんですか。
石灰の粉を、ものすごく強い力で押し固めます。そのあと、空気中の二酸化炭素を吸いながら、ゆっくり固まっていく。大理石ぐらいの硬さになるので、床にも使えます。
焼かないと、何が変わるんですか。
窯が要らなくなります。
それは、大きいことなんですか。
大きいですね。タイル工場にとって、窯って一番大きな存在なんですよ。建てるのにお金がかかるし、動かすのにずっと燃料がいる。
そこがまるごと無くなります。
あ、それはウクライナに限らず。
そうなんです。それともうひとつあって。
タイル工場って、毎日、割れたものとか刷りそこないが出るんですよ。たくさん作れば作るほど出る。それは捨てるしかなかった。
それも原料になる。
なります。工場から出る二酸化炭素も、固めるときに吸い込むほうに回せますし。
つまり、戦争がなくてもがれきは出てる、ということですね。
そういうことです。
ウクライナの話は、いまどこまで来てるんですか。
現地での調査が、この7月に終わりました。ここから実証に入ります。期限は2028年の3月まで。
そこでうまくいけば、現地の会社が自分たちの手でラインを広げていきます。うちは技術を渡して、原料の一部を送る。工場を持つのは、あくまで向こうの会社です。
その先は。
ヨーロッパですね。環境に配慮した建材が求められてる市場なので。
中東からも少しずつ話が来はじめてます。あちらは石を使う文化があって、白が好まれるので。
ヨーロッパに拠点を作りたい、みたいな話はあるんですか。
これはまだ願望ですけど、支店は置きたいですよね。僕としては、ボローニャかな。
なぜボローニャなんですか。
タイルの本場なんですよ。毎年大きな展示会もあって。好きだから、じゃなくて、そこが中心だから、という理由です。
聞いてると、ウクライナは入口のひとつ、という感じもしてきました。
技術としては、そうなんです。灰でも砂でも割れたタイルでも、同じように混ぜられるので。
ただ、あそこのがれきだけは、他と同じようには扱えないですね。誰かの家だったものなので。あの処理場に立った日から、それはずっと残ってます。
最後に。うちは田川で石灰を掘ってきた会社ですよね。それがキーウのがれきを床にしようとしてる。
そうですね。
足元から出るものを、焼いて、混ぜて、壁にする。それを百年やってきました。ずっと同じことをしてるつもりなんです。
やり方は変わってない。
変わってないと思います。遠くまで来たように見えて。
いまの正直なところは、どうですか。
まだ何もできてません。工場もないし、契約もこれから。機械が入るまで何か月もかかります。
うまくいくかどうかも、正直わからない。実証ってそういうものなので。
それでも3回行った。
行きましたね。夜行列車に乗って、シェルターで寝て、機械を探して。
知り合いから連絡が来たのが2024年のはじめですから、二年半になります。ここまでは来ました。
というわけで、まだ途中です。
続きが出てきたら、また書きます。