漆喰は、日本の建築や暮らしの中で、千年以上にわたり使われてきました。
ただ長い年月を残ってきたのではありません。建築のあり方も、人々の生活も、求められる機能や美しさも変わる中で、その時代ごとに選ばれてきました。
長く選ばれるものには、時代が変わっても失われない良さがあります。同時に、その良さを生かす技術や用途、伝え方は、時代に応じて変わってきたはずです。
受け継いだものを、ただ同じ形で守り続けるだけでは、次の時代へつなぐことはできません。何が大切なのかを見極め、余分なものを削ぎ落とし、今の社会に必要とされる姿へ高めていく。
私たちは、これを「磨く」と考えています。
漆喰には、「磨き仕上げ」と呼ばれる技法があります。職人が何度も手をかけ、丁寧に表面を押さえることで、素材がもともと持っている美しさを引き出す仕上げです。
それは、外から何かを飾り立てる仕事ではありません。素材と向き合い、持ち味を確かめ、それをより高い状態へ引き上げる仕事です。
会社もまた、同じだと考えています。
商品や市場、技術や用途、社会から求められる役割は変わります。変化に合わせて、自分たちの姿も柔軟に変えていかなければなりません。一方で、何もかもを変えてしまえば、私たちが受け継いできたものまで見失ってしまいます。
本質は変えない。磨き方は変え続ける。
私たちが新しい素材や用途、市場に取り組むのも、新しさそのものを求めているからではありません。行動すること自体が目的でもありません。
受け継いだ素材や技術の中にある可能性を見つけ、今の時代に生かせる形へと高めるためです。その先に、これまでになかった役割や選択肢を生み出していくためです。
創業から百年という時間は、私たちだけが積み重ねたものではありません。社員、取引先、地域の方々をはじめ、多くの人との関わりの中で受け継がれてきたものです。
だからこそ、百年を過去の実績として語るだけではなく、これから先への責任として受け止めたいと考えています。
田川産業が、社員、取引先、地域、そして社会に提供できるものは何か。
その問いに向き合いながら、素材を磨き、技術を磨き、人を磨き、会社を磨いていく。受け継いだものを今の時代に必要な形へと高め、そこから、まだないものを生み出していく。
千年使われてきた漆喰のように、時代に応じて姿を変えながら、この先も必要とされる会社でありたい。
そのために、私たちはこれからも、一つひとつの仕事を磨き続けます。
田川産業株式会社
代表取締役 行平史門