2026年08月13日配信
田川産業は、福岡県田川市の漆喰メーカーです。それを百年続けてきました。
その会社が、いまウクライナで、戦争で出たがれきをタイルにしようとしています。
ウェブサイトのリニューアルをお手伝いしている立場で、この話は前からずっと気になっていました。せっかくなので、社長の行平さんに時間をとってもらって、いろいろ聞かせてもらいました。
ウクライナの話って、そもそも何がきっかけだったんですか。
知り合いからの連絡です。大阪に住んでいる方で、以前Limixの展示会出展でお世話になった方です。普段からやり取りをしているわけではないのですが、Limixを思い出してわざわざ連絡をしてきてくれました。
その方が、ニュースを見たと。ウクライナががれきの処理で困っているらしい、と。
それだけですか。
それだけです。
え、それだけの連絡で動いたんですか。
気になったので、もとのニュースを探しました。たどっていくと、日本とウクライナのあいだで、民間の技術をつないでいく枠組みが動きはじめていることが分かって。
ウクライナのがれきは、一千万トンを超えると言われています。捨てる場所もない。運ぶだけでも大変な量です。
その時点で、うちならできる、と思ったんですか。
思いました。
うちのライミックスは、漆喰を焼かずに固めてセラミックにしたものです。原料の半分近くが骨材なので、そこに別のものを混ぜられるんです。
これまでも、いろいろ混ぜてきました。火力発電所の焼却灰。下水の汚泥を焼いた灰。太陽光パネルのガラス。中東の砂漠の砂。
灰と、建物のがれきって、同じように扱えるものなんですか。
そこは、やってみないと分からないところもあります。ただ、まったく知らないことに手を出したわけではない。混ぜること自体は、ずっとやってきたことなので。
だから、がれきと聞いたときに、たぶんできるな、と。
それで、最初にどこに相談したんですか。
九州経済産業局です。2024年のはじめごろですね。何か具体的な情報はないですか、と。
担当の方がずいぶん調べてくれました。本省のほうにそういう取り組みがあるようです、と。そのうえで、こう言われました。
「田川産業に何ができて、何をやろうとしているのか。それが分かる資料を作ってもらえれば、つないでみます」
それで、4月に資料を作りました。
その資料が、どうなったんですか。
渡して2か月ほどで連絡が来ました。ウクライナ側が求めている技術に当てはまるので、ベルリンに来てプレゼンしてもらえないか、と。
2か月。早すぎませんか。
早かったですね。4月に資料を作って、6月のはじめにはベルリンにいました。ウクライナの経済省の人たちの前で、技術の話をしています。
それは、向こうから声がかかったということですよね。
いやいや、こちらからの提案ですよ。
あ、そうなんですか。
よく誤解されるんですけど、誰かに求められて応えたわけじゃないんです。ニュースを見て、調べて、資料を作って、持っていった。それだけです。
そのあと、現地には何回行かれたんですか。
3回です。全部2025年で、7月、11月、12月。半年で3回行きました。
夜行列車で入って、地下のシェルターで寝て、主にKyivとLvivの2つの街を訪問し、最後は郊外のがれき置き場を見に行きました。
そのあいだに、国連の枠組みの中で、がれきを建材に変える調査が始まっています。
聞いてると、けっこう無茶ですよね。
まあ、そうかもしれません。
いまは、どこまで進んでるんですか。
正直に言うと、まだ何もできていません。工場も建っていないし、向こうで1枚もタイルは固まっていない。
今のは本当に、全部、絵に描いた餅なんです。それを実行していかなきゃいけなくて。
というわけで、まだ途中の話です。
それでも、聞いていて面白かったので、何回かに分けて書いていきます。うまくいった話ばかりではありません。行き詰まった話も、答えの出ていない話もあります。
次は、はじめて現地に行ったときの話です。