ウクライナに行った、と聞いたときに、まず浮かんだのは「どうやって入るんだろう」でした。飛行機は飛んでいないはずです。
はじめての渡航は2025年の7月。ちょうど一年前のことです。
そもそも、どうやって入国するんですか。
飛行機は飛んでいないので、ポーランドまで行って、そこから陸路です。
日本の企業がウクライナに入ること自体、簡単ではないんですよ。外務省に申請を出して、手配をして。この年は日本企業を何社か連れて現地を回る機会があって、うちもそこに加えてもらいました。
他にはどんな会社が。
医療の会社、運送の会社、ドローンの会社。業種はばらばらでしたね。
陸路というのは、車ですか。
夜行列車です。国境から乗って、朝キーウに着く。
乗ってるときに、ふと思ったんですよ。列車って線路の上を走るじゃないですか。この先どこに行くか、全部わかっちゃうな、と。逃げ場がない。
たしかに、そうですね。
あとから聞いたら、毎回ルートを変えているらしいんです。だから大丈夫ですよ、と。
それ、安心できます?
いや、逆ですよね。やっぱり狙われてるんだ、と思って。かえって怖くなりました。
着いて、最初に目に入ったのは何でしたか。
駅のすぐ前に、ガラスが全部割れたビルがあるんです。もう使われていない。最初に攻撃を受けた建物は、そのまま残してあるらしくて。
ただ、そのビルの手前を、家族連れが歩いてるんですよ。子どもが風船持って、楽しそうにしてる。
え、そうなんですか。
そう。こわい思いをして夜行列車に乗ってきて、街の人もさぞ張りつめてるだろうと思ってたので。なんとも言えない感じでした。
地下鉄も乗られたんですか。
乗りました。エスカレーターがとにかく長くて。降りても降りても着かない。速度も速くて、乗るタイミングがつかめないんです。
あれ、そのままシェルターになってるんですね。だから深い。
買い物とかは。
スーパーに入りました。これも意外だったんですけど、新鮮な野菜がきれいに並んでて、高いワインまで置いてある。
物がない、みたいなイメージでした。
そう思ってました。もちろん苦しいことはたくさん起きてるんです。それは事実で。ただ、それが全部じゃない。何年も続いてるわけですから、人は暮らしていかないといけない。
戦争をしている中でも、普通に仕事をして、なんなら夜はレストランで食事をする。そういう日常もあるんだなと、すごく感じて。
夜も普通に過ごせるんですか。
いや、夜は別です。空襲を知らせるアプリを入れるんですよ。だいたい8時か9時をすぎると、それが鳴りはじめる。
鳴ったら、何をしていても地下のシェルターに降りないといけない。ホテルの地下駐車場がその場所で。
毎晩ですか。
毎晩でした。泊まった日は全部、そこで過ごしましたね。
この一週間で、何を見たかったんですか。
すごく単純なことです。ここでものづくりができるのかどうか。
毎日空襲があって人が亡くなっている、それが街のすべてなら、仕事どころじゃないはずなんです。身を守るので精一杯のはずで。
でも、そうじゃなかった。
野菜は並んでるし、地下鉄は動いてるし、子どもは風船持って歩いてる。
次は11月、キーウ以外の街に行くことになります。